- 公開日:2024年07月18日
クラウド検討の第一歩!オンプレミスからクラウドへの移行の課題と対策
デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代、企業のITインフラの見直しは避けられません。特にオンプレミスからクラウドへの移行は、コスト削減や業務効率化につながる手段として大きく期待されています。一方で、クラウド移行にはさまざまな課題やリスクも伴います。
本記事では、オンプレミスとクラウドの基本的な違いから、クラウド移行のメリットや移行に伴う課題、そして具体的な対策や運用管理のポイントについて詳しく解説します。
オンプレミスとは?クラウドとは?
オンプレミスとは、自社の設備でサーバを設置・運用する形態で、セキュリティ性やカスタマイズ性、柔軟性に優れています。
一方、クラウドはインターネットを介してサーバやITインフラ、アプリケーションを利用する形態で、スケーラビリティやコスト効率といった点が利点です。それぞれメリットとデメリットがあるため、目的や要件に応じて適切な方を選択しなければなりません。それぞれの特徴を理解することが、最適なシステム基盤選択の第一歩となります。
オンプレミスとクラウドの比較については、こちらの記事をご覧ください。
>>オンプレミスとクラウドの比較|コストの違いや特徴、移行について解説
オンプレミスからクラウドへ移行するメリット
今、多くの企業でクラウドへの移行が進められています。なぜ、オンプレミスからクラウドへの移行が増えているのでしょうか。
ここでは、オンプレミスからクラウドへ移行するメリットについて紹介します。
ITコストの削減
クラウド移行のメリットの1つ目は、「ITコスト削減」です。
オンプレミスでは、初期投資として高額なハードウェア購入費用がかかり、さらに電力、冷却、スペース、専門人材の確保などの維持管理費用も必要です。
一方、クラウドではこれらの初期投資が不要で、使用したリソースに応じて支払う料金体系が採用されています。また、リソースの増減が柔軟に行えるため、無駄なコストの削減につながります。
こうした理由からオンプレミスからクラウドへ移行した場合、ITコストの削減が期待できます。
スケーラビリティと柔軟性の向上
クラウド移行のメリットの2つ目は、「スケーラビリティと柔軟性の向上」です。
オンプレミスでは、サーバのリソースを増減させるために物理的なハードウェアの追加や変更が必要であり、これには時間とコストがかかります。
一方、クラウドでは、必要に応じてリソースを迅速かつ効率的にスケールアップまたはスケールダウンできます。これにより、急な需要の変動にも柔軟に対応でき、ビジネスの成長や変化に即座に対応することが可能です。また、クラウドサービスは多様なオプションを提供しており、企業のニーズに合わせた最適なオプションを選択することが可能です。
バックアップと災害復旧の容易化・高度化
オンプレミスからクラウドへ移行するメリットの3つ目は、「バックアップと災害復旧の容易化・高度化」です。
オンプレミスでは、バックアップ環境の構築をはじめ、運用管理や災害復旧のためのインフラ整備に多大な時間とコストがかかります。一方、クラウドでは、データはクラウド事業者が提供するサーバ上に保管されており、そのデータは自動的に複数の地理的に分散したデータセンターにバックアップされています。また、クラウド事業者のサーバ内でデータの一元化が図られているため、バックアップツールなどを用いて容易にバックアップ環境を構築することが可能です。
そのため、万が一災害などにより利用しているサーバのデータを損失してしまっても、他拠点にバックアップしたデータを利用することで被害を最小限に収めることが可能です。
このように、クラウドへ移行することで、データやITシステムの安全性を確保し、ビジネスの継続性を高めることができます。
維持管理の運用負荷の軽減
オンプレミスからクラウドへ移行するメリットの4つ目として、「維持管理の運用負荷の軽減」が挙げられます。
オンプレミスでは、サーバの維持管理に多大なコストと手間がかかり、専門的な知識を持つ人材の確保も必要です。
一方、クラウドでは、SaaS/PaaS/IaaSといったサービスの内容に応じて、サーバの保守や運用管理はクラウド事業者が担当するため、企業のIT部門の負担が大幅に軽減されます。
これらの運用負荷が軽減されることで、IT担当者はコア業務に集中できるなど、リソースを効果的に活用できるようになります。
クラウド移行における課題とその対策
一方で、オンプレミスからクラウドへの移行にはいくつかの課題があります。
ここでは、クラウド移行に伴う主要な課題を取り上げ、それらを解決・改善するための具体的な対策について紹介します。
セキュリティにおける課題と対策
クラウドは、インターネットを介して利用するサービスのため、データ漏えいや不正アクセスのリスクが増加します。
これらのリスクを軽減するためには、エンドポイントセキュリティを強化し、暗号化技術を適用することが重要です。エンドポイントセキュリティを強化することで、各デバイスからのアクセス管理が徹底され、不正アクセスの防止が図れます。
さらに、暗号化技術を利用することで、データが外部に漏れた場合でも、情報の安全性が保たれます。このような対策により、クラウド環境におけるデータ保護が強化され、企業は安心してクラウド移行を進めることができます。
クラウドデータ保護と海外法のリスク
クラウドサービス事業者の所在国によっては、データ保護や犯罪捜査に関する法制度が整備されており、日本国内の利用でもデータの開示要求をうけるリスクについても認識しておく必要があります。
米国の「米国クラウド法(CLOUD Act)」では、米国内に本拠地を置く企業に対して、令状なしでデータ開示を要求することが可能になりました。万が一、海外政府からのデータ開示要求があった場合、その間クラウドの利用がストップするだけでなく、情報漏えいのリスクも高まるでしょう。
この対策としては、クラウド基盤として国産クラウドを選択するという方法が考えられます。国産クラウドであれば日本の法律が適用されるため、海外政府の干渉を受ける心配はありません。
パフォーマンスにおける課題と対策
クラウド環境では、ネットワークやレスポンスの遅延が業務効率に直接影響を与えることがあります。
これを防ぐためには、適切な帯域幅の確保とロードバランサーの使用が重要です。適切な帯域幅を確保することで、ネットワークの混雑を緩和し、安定した接続を維持できます。さらに、ロードバランサーを使用することで、トラフィックを均等に分散し、サーバの負荷を軽減することができます。これにより、クラウド環境でのパフォーマンスが向上し、ビジネスの継続性が確保されます。
また、リソースの動的なスケーリングも重要です。需要に応じてリソースを増減させることで、効率的な運用が可能になります。これらの対策を講じることで、クラウド移行におけるパフォーマンスの課題を解決し、企業のIT環境を最適化することが可能となります。
システム・データの移行作業における課題と対策
また、実際の移行作業も重要なポイントです。
システムの移行作業は綿密な計画と正確性が求められる難易度が高い作業の1つで、クラウドへの移行においても同様です。
現行システムの状況把握から、移行方針を決定し、さらに移行計画の策定やツール選定、移行プログラム作成、リハーサル実施と、移行作業を実施するまでに多くの時間が費やされます。システムが複雑であればあるほど、難易度がさらに高くなり、非常に多くの時間と作業が必要となります。
また、移行作業において万が一トラブルが発生した場合、データ不整合やデータ損失のリスクも考えられます。
移行先がクラウドの場合、移行作業時のリスクを低減する方法がいくつかあります。
まず1つ目はパブリッククラウド事業者が提供するマイグレーションツールの活用です。AWSやAzureといったパブリッククラウド事業者の多くは、クラウドへの移行のためのツールやサービスを用途別に用意しています。自社の要件に合ったツールやサービスを選択することで、スムーズなクラウド移行が実現できます。
2つ目は、クラウドバックアップツールの活用です。
サードパーティベンダーからさまざまなクラウドバックアップツールが提供されています。クラウドバックアップツールは、オンプレミス環境やクラウド環境から、指定したクラウド環境へバックアップを取得・運用するツールです。このバックアップツールを活用することで、クラウド環境へのシステムやデータの移行が容易となります。
またこれらのツールは、クラウドへの移行を安全・効率的に行えるだけでなく、移行後はクラウドでのバックアップ環境として活用できます。クラウドバックアップツールを活用することで、データの迅速かつ安全な移行が可能となり、移行後のデータ保護も強化されます。これにより、企業はデータ移行作業の煩雑さを軽減し、安全にクラウド環境へ移行できます。
クラウド移行後の運用管理のポイント
クラウドには多くのメリットがありますが、それらのメリットを十分に享受するためには、日々の運用管理が重要となります。
本章ではクラウド移行後の運用管理のポイントについて解説します。
クラウド管理ツールの活用
クラウド運用管理のポイントの1つ目として、「クラウド管理ツールの活用」が挙げられます。クラウド運用管理では、システムのパフォーマンスやリソースの使用状況、セキュリティの脆弱性などについて、リアルタイムでの監視と管理を継続的に行うことが求められます。クラウド管理ツールを活用することで、これらの業務を効率化できます。例えば、異常が発生した際には、アラート設定により迅速に対応でき、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
さらに、監視データを分析することで、リソースの最適化やコスト削減も実現できます。クラウド環境の管理と最適化を効果的に行うためには、定期的な監視と迅速な対応が不可欠です。
コストの管理と最適化
クラウド利用で重要となるコスト管理は、オンプレミスとは異なる新しい管理項目の1つです。
従量課金制のクラウドサービスを活用する場合は、クラウド事業者が提供するツールやサービスを活用して、リソース使用量をリアルタイムで把握し、不要なリソースを排除するなどリソースをコントロールすることでコスト削減につなげることができます。
例えば、AWSのCost Explorerでは、どのリソースがどれだけコストを消費しているかを詳細に確認できます。
また、定額制や契約リソース内で自由にサーバの増減が可能なクラウドサービスもあり、クラウド移行対象となるシステム要件や自社の要件にあわせて、コストの最適化が可能なクラウドサービスを選定しましょう。
まとめ
本コラムでは、クラウド移行のメリットや課題、その対策、運用管理のポイントについて詳しく解説しました。
オンプレミスからクラウドへの移行は、社会的情勢や働き方改革、デジタルトランスフォーメーションの推進等さまざまな理由において、日本の企業でも多く進んでいます。クラウドには多くのメリットがありますが、一方で課題も存在します。これらの課題に対し、適切な対策を行うことで、クラウドがもたらすメリットを最大限に享受することができ、ビジネスの効率化や発展へとつなげることができるでしょう。
オプテージでは、パブリッククラウドや自社クラウドなどさまざまなクラウドサービスをご提供しており、お客さまのニーズに基づき、最適なクラウド移行のご提案が可能です。
自社クラウドの「オプテージ コネクティビティ クラウド・ストレージ(OCCS)」は弊社データセンターで提供している国産クラウドです。また、クラウド移行にはクラウドバックアップツール「Veeam」を用い、OCCS+Veeamでファイルサーバなどの大容量のオンプレミスシステムの移行作業を効率的に実現した事例が多数あります。
クラウド移行についてお悩みのことがありましたら、ぜひオプテージまでお気軽にご相談ください。
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