- 公開日:2023年08月30日
オンプレミスとクラウドの比較|コストの違いや特徴、移行について解説
最適なデータ管理環境を選ぶことは、企業の成長にとって重要です。ITインフラの構築や運用には、オンプレミスとクラウドの大きく異なる2つの形態があります。オンプレミスは自社でサーバやネットワークを保有・運用する形態、クラウドはインターネット経由で提供されるオンラインサービスを利用する形態です。
それぞれメリットとデメリットがあるため、目的や要件に応じて適切なほうを選択しなければなりません。この記事を参考にオンプレミスとクラウドを比較し、自社に適したインフラ構築・運用を選びましょう。
オンプレミスとクラウドの比較
はじめにオンプレミスとクラウドの特徴を整理しました。オンプレミスとクラウドは、以下の点で違いがあります。
上の表に記載した項目について、それぞれ詳しくみていきましょう。
1.設備の導入形態、管理・運用
オンプレミスとクラウドの最大の違いは、設備を自社で保有するかどうかです。オンプレミスでは、自社でサーバやネットワークなどの設備を購入・設置し、管理します。これにより、自社のニーズに合わせてシステムをカスタマイズしたり、制約なくデータを扱ったりすることができます。また、リアルタイム性やパフォーマンスも高く、ネットワークのひっ迫状況に影響を受けにくいのがメリットです。
一方クラウドは、インターネット経由でクラウド事業者から必要なリソースを提供してもらう形態です。これにより、自社で設備を購入・管理する必要がなくなります。また、クラウド事業者が提供するさまざまな機能やサービスを利用できます。
2.導入・運用にかかるコスト
オンプレミスは自社で設備を購入するため、初期コストが高くなりがちです。
また、設備の保守や更新、セキュリティ対策などの運用コストも自社で負担する必要があります。しかし一度設備を購入すれば、固定費として予算管理がしやすくなる点はメリットとなるでしょう。
一方、設備を購入する必要がないクラウドは初期コストを抑えられるのが特徴です。クラウドはサービスの使用料をプロバイダーに支払う形態であるため、設備の保守や更新、セキュリティ対策などの運用コストはクラウド事業者が負担します。
しかし、利用量に応じて変動費が発生することもあり、予算管理が難しくなる可能性は否めません。オンプレミスとクラウドは、コストの発生タイミングや性質が異なるため、ビジネスの規模や期間に応じて適切なほうを選びましょう。
3.容量や機能の拡張しやすさ
オンプレミスは、拡張性はあるものの柔軟性が低いのが特徴です。容量や機能を増やす場合は、追加投資や開発の時間が必要になります。反対に、必要な容量や機能が減った場合は、設備を十分に使わず余ってしまうこともあるでしょう。
一方のクラウドは、拡張性はサービスに依存するものの、柔軟性は高いのが特徴です。容量や機能を増減、あるいは変更する場合もスムーズで簡単です。また、利用量に応じて料金が変わる形態なので、無駄なコストが発生しません。
オンプレミスとクラウドは、容量や機能の変化に対応する速度や効率が異なるので、ビジネスの成長や変化に応じて選ぶことが大切になるでしょう。
4.セキュリティの高さ
オンプレミスは自社でデータやシステムを管理するので、セキュリティレベルやポリシーを自由に設定できます。設備やシステムが物理的に自社内にあるため、外部からの不正アクセスや盗難などのリスクを低減しやすいのは大きなメリットです。ただし、パッチ適用などの対応を自社で行う必要があるので、セキュリティ対策はしっかりと講じておきましょう。
一方、クラウドはクラウド事業者がセキュリティを担保してくれます。ただし、その範囲・責任は契約内容やクラウド事業者によって異なります。また、インターネット経由でデータやシステムにアクセスするため、通信の暗号化や認証などの対策が必要です。
5.保守・コンプライアンスの所在
自社で設備を保有するオンプレミスは、自社で機器やソフトウェアの保守・更新・トラブルシューティングなどをおこなわなければなりません。保守・更新・トラブルシューティングには専門的な知識や技術が必要で、コストや時間がかかります。また、法律や規制に従ってデータやシステムを適切に管理する責任も自社にあります。
クラウドの場合、保守・更新・トラブルシューティングなどはクラウド事業者の責任です。自社の負担を軽減できるのは大きなメリットですが、クラウド事業者が法律や規制に準拠しているかどうかの確認は事前におこなう必要があるでしょう。
6.利用に向いている企業の特徴
ここまでの内容をふまえて、オンプレミスとクラウドが向いている企業の特徴をまとめました。オンプレミスは次のような企業に向いています。
● データ・システムのセキュリティやコンプライアンスに厳しい要件がある企業
● データ・システムのカスタマイズや最適化を自由におこないたい企業
● 初期投資は高くても長期的なコスト削減を狙う企業
より具体的には、金融や医療、防衛、公共セクターなど自社やグループ企業内でのみ使用する業務システムを運用する企業・組織や、機密情報・個人情報などを扱うシステムを運用する企業、メールサーバや社内テレビ会議・web会議システムなどを運用する企業などが挙げられます。
次に、クラウドが向いているのは以下のような企業です。
● データ・システムのセキュリティやコンプライアンスに柔軟な要件がある企業
● データ・システムの拡張性(スケーラビリティ)や可用性を重視する企業
● 初期投資を抑えて短期的なコスト効率を高めたい企業
クラウドは、中小規模の案件や柔軟性が必要な要件を持つ企業に向いています。初期投資を抑えつつ、必要なサービスを必要なときに使いたい場合や、急激なスケールアップ・ダウンが必要な場合に有効です。特に、IT部門が小規模な企業や、リソースに限りがある企業は、クラウドの活用によりコスト削減と効率化を実現できる場合が多いでしょう。
オンプレミスかクラウドか?選択のポイント
ここからは自社にあったインフラ環境を選ぶにあたって、考慮すべきポイントを見ていきましょう。
事業の目標と要件
オンプレミスかクラウドかを選択する際には、まず自社の事業の目標と要件を明確にすることが大切です。データやシステムに関して、次のような点を考えてみましょう。
● 性能や品質はどの程度必要か?
● セキュリティやコンプライアンスの厳しさはどの程度か?
● カスタマイズや最適化をおこないたいか?
● 利用量や需要はどの程度変動するか?
● 保守・更新・トラブルシューティングは自社で可能か?
● 初期投資と運用コストはどの程度許容できるか?
性能や品質、セキュリティやコンプライアンスの要件などをふまえて、どちらの環境が適切かを検討します。将来的な成長や変化を見越して、長期的な視点で最適な選択をすることが必要です。
データの保護とリカバリ
データの保護とは、データを紛失や破損から守ることで、データのバックアップや暗号化などが含まれます。データのリカバリとはデータを復元すること。ビジネスの継続にとってインフラ環境のリカバリは欠かすことのできない問題といえるでしょう。災害や障害が発生した場合もビジネスを継続できるよう、非常時に対する備えをしておくことが大切です。
オンプレミスは、自社でデータの保護とリカバリの方法を決めなければなりません。一方クラウドは、クラウド事業者がデータの保護とリカバリをしてくれますが、その範囲や責任は契約内容によって異なります。そのためクラウドでは、クラウド事業者のサービスレベルやポリシー、提供するデータセンターの場所や種類にも注意しましょう。
事業の成長と変化への対応
事業の成長と変化への対応は、企業によって異なる要素があります。たとえば、次のような観点でチェックしてみてはいかがでしょうか。
● 利用量や需要は増減するか
● 機能や仕様を変更する可能性はあるか
● 利用するユーザー数や地域が拡大する可能性はあるか
● 関係法令が変更されたらどう対応するか
オンプレミスは、インフラのスケールアップ・ダウンには物理的な作業が必要になるため、急激な変化への対応は難しいでしょう。一方、クラウドはクラウド事業者がリソースの拡張をおこなうため、柔軟かつ迅速に事業の成長や変化に対応できるのが特徴です。クラウドは将来の成長や変化を見越して、拡張性と柔軟性のある環境を持つことで、リソースを効率的に運用できます。
オンプレミスからクラウドへ移行するには?
最後にオンプレミスからクラウドへの移行に必要なステップを考えます。移行には慎重な計画が必要です。データの移行方法やアプリケーションの互換性確認、セキュリティ対策の見直しなど、ステップを毎回確認しましょう。
小規模なプロトタイプの移行から始めて、リスクを最小限に抑えるアプローチも有効です。移行前後のシステムのテストやパフォーマンスチューニングをおこない、予期せぬ問題を未然に防ぎましょう。
オンプレミスからクラウドへ移行するメリット
オンプレミスからクラウドに移行すると、次のようなメリットがあります。
● 初期投資を抑えることができ、コスト削減が見込める
● プロバイダーの提供するサービスを利用することで、新機能や最新技術を迅速に導入できる
● クラウドの柔軟性により、急激なスケールアップやダウンに対応しやすくなる
● セキュリティやバックアップなど、プロバイダーによる専門的な管理を受けられる
上記のメリットが自社の現状と課題に対して、どの程度のインパクトがあるかを考えてみるとよいでしょう。
移行の手順とベストプラクティス
オンプレミスからクラウドへ移行する際の手順は、次のようなステップが一般的です。
● 1:移行前の準備
移行するシステムやデータの整理・分類をおこないます。また、移行するクラウドサービスやプロバイダーを選択します。
● 2:移行計画の策定
移行する目的や範囲、期限、責任者などを定めます。移行する際に発生するリスクや対策も考慮しましょう。
● 3:移行パートナーの選定
移行に関する知識や経験が豊富なパートナーを選定します。パートナーは、移行計画の策定や実施においてサポートしてくれます。
● 4:移行方法の選択
移行するシステムやデータに応じて最適な移行方法を選択します。「一括移行」は一度に全てのシステムやデータを移行することで、「段階移行」は少しずつシステムやデータを移行していくことです。「ハイブリッド移行」は、一部のシステムやデータをオンプレミスに残し、一部はクラウドに移行する方法になります。
● 5:移行の実施
移行するシステムやデータをバックアップし、クラウドへ転送します。移行後の動作確認やテストも欠かさずおこないましょう。
● 6:移行後の運用
移行後のシステムやデータの管理や監視をおこないます。また、移行後の問題や改善点を検討します。
移行後のモニタリングと最適化のポイント
移行を実施したら終了ではなく、継続的にシステムのモニタリングと最適化をしていくことが重要です。クラウドの利用量や費用を定期的にチェックし、必要なリソースを効果的に活用できるように努めましょう。それによってコスト面のメリットを最大限に引き出せます。
また、クラウド事業者と密にコミュニケーションをとり、適切なサポートを受けることで、クラウド環境の稼働を安定的に保つことができます。
オンプレミス・クラウドのハイブリッドという選択肢
これまでオンプレミスで運用していた企業のなかには、どちらがよいか決めきれないところもあるかもしれません。そのような企業は、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドな選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。
たとえば、セキュリティ要件の厳しい重要なデータはオンプレミスで管理し、一方で一時的な負荷の増加や新規プロジェクトにはクラウドを利用するといった方法が考えられます。ハイブリッド環境は、各環境の利点を最大限に活かすことができ、特定の要件に応じた柔軟なシステムを構築できるのが魅力です。
まとめ
オンプレミスからクラウドへ移行すると、コスト削減や柔軟性、セキュリティなどのメリットがあります。一方、クラウドはクラウド事業者に依存する面もあるのがネックに感じられるかもしれません。移行は計画的かつ慎重に進める必要があり、完全にクラウドに移行するのは難しいという判断もあるでしょう。そのようなときは、もうひとつの選択肢としてハイブリッドがあります。事業の目標や要件を理解し、将来的な成長や変化にも対応できる戦略的な選択が成功のカギとなるでしょう。
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