- 公開日:2023年08月30日
- 更新日:2025年07月16日
オンプレミスとは?クラウドとの違いや比較ポイント、選び方を解説

企業のITインフラ構築を検討する際には、オンプレミスとクラウドのどちらが自社に適しているかを判断する必要があります。近年はクラウドの普及が進む一方で、高度なセキュリティやカスタマイズ性を重視し、オンプレミスを選ぶ企業も少なくありません。
本記事では、オンプレミスの基本的な特徴やクラウドとの違い、選定時に考慮すべきポイント、クラウド移行による具体的なメリット、移行の手順を紹介します。
オンプレミスとは

オンプレミスとは、自社でサーバやソフトウェアを保有・構築・運用する形態を指します。社内にITシステムやソフトウェアを設置し、構築から運用・保守までを自社で実施する点が特徴です。2000年代にクラウドが普及して以降、それと区別する目的で「オンプレミス」という呼称が一般化しました。
近年では、データセンターのハウジングやホスティングサービスを活用するケースも見られ、高度なセキュリティ管理や柔軟なカスタマイズが可能である一方、導入や運用には高いコストと専門的な知識が求められます。
データセンターについては以下の記事で詳しく説明しています。
関連記事:データセンターの基礎知識|自社サーバとの違い・選び方・導入メリットを解説
クラウドとは

クラウドとは、クラウド事業者が提供するサービスをインターネット経由で利用する運用形態を指します。オンプレミスのように自社でサーバやソフトウェアを準備・管理する必要がなく、必要なハードウェアやソフトウェアはクラウド事業者によって提供されます。
データはクラウド上に保存され、インターネット環境があれば場所を問わずアクセス可能です。そのため、テレワークやモバイルワークとの相性も良好であり、業種や企業規模を問わず多くの企業で導入が進んでいます。
クラウドサービスについては以下の記事で詳しく説明しています。
関連記事:クラウドサービスとは?概要やメリット・デメリットをわかりやすく解説
オンプレミスとクラウドの主な違い

オンプレミスとクラウドは、設備の導入方法やコスト、運用体制など多くの点で異なります。主な違いは以下の表のとおりです。
項目 | オンプレミス | クラウド |
---|---|---|
設備の導入形態・運用管理 | ・自社でサーバやネットワークを購入 ・設置、管理は自社で実施 |
・ 事業者の設備を利用 ・インターネット経由でアクセス |
コスト構造 | ・初期コストが高い
・運用コストも自社負担 |
・初期コストを抑えやすい
・利用量に応じた従量課金が一般的 |
拡張性・柔軟性 | ・拡張には追加投資と時間が必要 | ・拡張や縮小が容易 ・柔軟な運用が可能 |
セキュリティ管理 | ・自社で細かなポリシー設定が可能 ・物理的にも社内管理 |
・事業者が対応 ・通信の暗号化やアクセス制御が重要 |
保守・コンプライアンス対応 | ・全て自社対応 | ・保守・更新は事業者が対応
・法令順守は契約内容の確認が必要 |
向いている企業の特徴 | ・高度なセキュリティが必須
・カスタマイズ重視 ・長期運用前提 |
・拡張性重視
・初期投資を抑えたい ・短期運用前提 |
代表的な利用シーン | ・ 金融、医療、行政などの高セキュリティ領域
・社内限定の基幹システム |
・スタートアップ、中小企業
・アクセスが集中しやすいWebサービス ・リモート対応業務 |
オンプレミスは、自社でサーバやネットワークを構築・管理するため、セキュリティやカスタマイズ性に優れている一方、高い初期費用と専門知識が求められます。クラウドは、導入の手軽さや拡張性が強みであり、コストを抑えてスモールスタートしたい企業に適しています。
オンプレミスかクラウドか、選定時に考慮すべきポイント

オンプレミスとクラウド、どちらを選ぶべきかは、自社の業務内容や将来的なビジョンによって最適な選択が異なります。導入形態の違いにとどまらず、セキュリティ、運用体制、拡張性など、さまざまな観点から総合的に判断することが重要です。ここでは、選定時に考慮すべき主なポイントについて紹介します。
自社の業務要件の適合性
オンプレミスかクラウドを選ぶ際は、まずは自社の事業目標とITに求める要件を明確にすることが重要です。例えば、求められるシステム性能や品質、セキュリティ対策の厳しさ、法規制への対応レベルなどは企業ごとに異なります。
また、カスタマイズの必要性やアクセス負荷の変動、障害時の対応体制、初期費用や運用コストの許容範囲も選定の判断材料となります。目先の利便性や価格だけでなく、将来的な拡張性や事業成長への対応力も考慮して、最適な運用形態を選ぶとよいでしょう。
データ保護・復旧体制の充実度
データ保護とは、情報の紛失や破損を未然に防ぐ対策であり、データ復旧はトラブル発生時にシステムや情報を元に戻す仕組みを指します。オンプレミスでは、これらの対策を自社で構築・運用する必要があり、バックアップの方式や保存場所、復旧手順まで自ら決めることが求められます。
一方のクラウドでは、一定範囲のデータ保護や復旧機能は事業者が提供するものの、その対応範囲や責任の所在は契約内容に依存するため、サービスレベル(SLA)やデータセンターの場所・構成も事前に確認しておくことが推奨されます。
成長・変化への対応力と柔軟性
オンプレミスかクラウドかの選定時には、将来の成長や事業環境の変化にどれだけ対応できるかを見極めることも重要です。例えば、システムの利用量や機能変更の可能性、ユーザー数や利用地域の拡大、法改正への対応力などを確認しておくことが推奨されます。
オンプレミスは、物理的な設備変更が必要なため柔軟性に乏しく、変化に対応するには時間とコストがかかります。一方のクラウドは、リソースの拡張や変更をクラウド事業者が担うため、柔軟かつ迅速な対応が可能です。
オンプレミスからクラウドに移行するメリットとは

オンプレミスからクラウドへの移行は、コストや業務負担の軽減だけでなく災害復旧や拡張性の面でも大きな利点があります。ビジネス環境の変化に迅速に対応できる柔軟性は、企業にとって重要な競争力となります。
ここでは、クラウド移行することで得られるメリットについて紹介します。
コストの削減
オンプレミスでは、サーバやネットワーク機器などの購入に多額の初期費用がかかるうえ、運用にも電力や冷却、専用スペース、専門人材の確保といった維持コストが継続的に発生します。
一方、クラウドは初期投資が不要で、使った分だけ支払う「従量課金制」を採用しており、定額課金制と比べて、無駄なコストを抑えやすいのが特長です。また、必要なタイミングで柔軟にリソースを増減できるため、状況に応じた最適な運用が可能となり、結果的に総合的なコストの削減につながります。
バックアップと災害復旧の効率化・高度化
システムの安全性や事業継続性を高めるうえで、バックアップや災害復旧の体制は非常に重要です。しかし、従来のオンプレミス環境では、これらの仕組みを自社で構築・運用する必要があり、多くの時間とコストがかかるのが一般的でした。
クラウドを活用すれば、データは自動的に複数の拠点に保存され、災害時のリスクを分散できます。さらに専用ツールを利用することで、効率的なバックアップ運用が可能になります。万が一トラブルが発生しても迅速な復旧が期待できるため、BCP(事業継続計画)対策やIT環境の安全性向上に大きく貢献します。
拡張性の高さ
業務の成長や需要の変化に応じて、ITリソースを柔軟に拡張できるかどうかも重要なポイントです。オンプレミスの場合、サーバの増設や構成変更には物理的な作業が伴い、時間もコストもかかります。
一方のクラウドでは、必要なときにすぐスケールアップ・スケールダウンが可能なため、急なアクセス増加や処理負荷の変動にも柔軟に対応できます。さらに、多様なクラウドサービスのなかから自社のニーズに合った構成を選べるのも、大きな魅力です。
専門人材による支援と負担軽減
オンプレミスでは、サーバの保守や運用を自社で対応する必要があり、専門知識を持つ人材の確保・育成や継続的な管理コストが大きな負担となります。
一方のクラウドでは、保守・運用の多くをクラウド事業者が担っており、SaaS・PaaS・IaaSなどのサービス形態に応じて、必要な範囲のみを効率的に外部委託することが可能です。これにより、社内のIT担当者はコア業務や戦略的な取り組みに注力しやすくなり、限られた人材リソースをより効果的に活用できます。
オンプレミスからクラウドへの移行手順

オンプレミスからクラウドへ移行する際は、事前準備から移行方法の選定、移行後の運用までを段階的に進めることが重要です。適切な手順を踏むことで、業務への影響を最小限に抑え、安定したクラウド環境の構築が可能になります。
ここでは、オンプレミスからクラウドへ移行する際の手順を紹介します。
移行前の準備と計画策定
クラウド移行を円滑に進めるためには、初期段階での綿密な準備が欠かせません。まず、移行対象となるシステムやデータを洗い出し、現状のIT資産を正確に把握することが重要です。その後、移行の目的、範囲、スケジュール、予算、担当者の役割を明確にし、実行可能な計画を立てましょう。
あわせて、自社に最適なクラウドサービスやプロバイダーの選定も行います。自社だけでの対応に不安がある場合は、必要に応じて外部の技術支援を活用することで、技術的な課題や作業負担を大きく軽減できます。
最適な移行方法の選定と実行
続いて、自社に最適なクラウド移行方法の選定と実行を行います。移行には短期間で切り替えられる「一括移行」や、業務を止めずに段階的に進める「段階移行」、重要システムのみオンプレミスに残す「ハイブリッド移行」などの手法があり、システムの特性や業務への影響を踏まえて選ぶことが重要です。
どの方法を選ぶ場合でも、事前のバックアップ取得と移行後の動作確認・テストを徹底し、安定稼働を確保することが成功のカギとなります。
移行後の運用と最適化
クラウド移行が完了したあとは、安定した運用と継続的な最適化が重要です。まず、システムの稼働状況を常時監視し、障害が発生した際には迅速に対応できる体制を整えましょう。さらに、実際の利用状況に応じてリソースの使用量を見直します。これによって、無駄なコストを抑えられます。
あわせて、セキュリティポリシーやアクセス管理の見直しを行い、自社に最適な運用体制を構築することで、クラウド環境をより安全かつ効率的に活用することが可能です。
まとめ

本記事では、オンプレミスの基本的な特徴やクラウドとの違い、選定時に考慮すべきポイント、クラウド移行による具体的なメリット、移行の手順を紹介しました。
オンプレミスは、高いセキュリティ性やカスタマイズ性が求められる環境に適していますが、導入・運用には専門知識や多くのコストが伴います。一方、クラウドは初期投資を抑えつつ、柔軟な拡張性や災害対策、保守負担の軽減など、多くの面で企業のIT運用を支援します。重要なのは、自社の業務要件や将来的な成長戦略に応じて最適な運用形態を選定することです。
オプテージでは、お客さまの課題に寄り添い、多様なクラウドサービスとネットワーク、データセンターを組み合わせ、最適なソリューションを提供しています。「OPTAGEのクラウドソリューション」なら、基盤設計から構築、運用・保守までワンストップで支援できる体制を整えており、クラウドに不慣れな企業でも安心して導入・活用いただけます。
オンプレミスからクラウドへの移行についてお悩みの点がありましたら、オプテージまでお気軽にご相談ください。
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