【クラウド】SaaS(サース)とは?代表例や導入のメリットを解説
- 公開日:2024年10月16日
SaaSとは、サービス提供事業者から提供される、インターネット上で利用可能なソフトウエアサービスのことです。
SaaSという言葉を初めて聞いた方もいるかもしれませんが、実は業務で利用されるオンライン会議ツールやチャットツール、グループウエアなどの中にはSaaSが多くあり、ビジネスシーンにおいてとても身近なサービスとなっています。
本記事では、SaaSの基本情報や、PaaS/IaaSとの違い、メリットなどについて解説します。社内のICT化を進めている方や、取引先とのやり取りでお困りの方は、ぜひご活用ください。
- SaaSとは?
- SaaSはクラウドサービスの一種
- SaaSの特徴
- SaaSとPaaS、IaaS、その他との違い
- PaaS
- laaS
- 〇aaSとの違い
- SaaSの代表例
- オフィススイート
- Web会議システム
- ビジネスチャット
- グループウエア
- オンラインストレージ
- スケジュール管理
- 電子契約システム
- 会計ソフト
- ワークフローシステム
- SaaSのメリット
- ソフトウエアの開発や導入が不要
- 導入コストが安価
- 常に最新機能を利用できる
- 保守管理の負担が少ない
- SaaS導入時のポイント
- 導入目的を明確にする
- 必要な機能を洗い出す
- セキュリティ体制を確認する
- コストパフォーマンスを検討する
- 安定して利用できる体制を整える
- まとめ
SaaSとは?
SaaSとは「Software as a Service」の略で、サービス提供事業者から提供されるソフトウエアを、インターネット上で利用できるクラウドサービスの一つです。読み方は「サース」または「サーズ」で、利用の際に月額や年額が設定されているものや、無料のサービスもあります。
SaaS登場以前のソフトウエアサービスはCD-ROMなどでライセンス販売され、購入者がソフトをインストールし利用していましたが、SaaSの登場によりオンラインサービスとして利用できるようになり、CD-ROMからのインストールが不要になりました。
SaaSでよく利用されるソフトウエアの具体例としては、オンライン会議ツールやチャットツール、グループウエアなどが挙げられます。
SaaSはクラウドサービスの一種
クラウドサービスは、インターネットを経由して提供されるサービスの形態そのものを指します。SaaSはこのクラウドサービスの一つであり、ソフトウエアをインターネット経由で利用できるサービスを指すものです。
用語集
SaaSの特徴
SaaSには、インターネットを経由すればどこにいてもアクセスできる、という特徴があります。
CD-ROMを使用する場合のように特定のパソコンだけがライセンスを得て利用できる仕組みとは異なり、契約したアカウント(利用者登録したユーザー情報・アクセス権)で利用します。そのため、外出先や在宅勤務でもアカウントにログインできれば、パソコンやタブレットなど任意のデバイスからアクセスが可能です。
SaaSの機能によっては、複数のユーザーによる同時作業も可能です。例えば、ドキュメントの編集機能があるSaaSでは、複数のユーザーが同時にファイルを閲覧したり編集したりできます。
また、ファイルはクラウド上で保存されるため、物理的なストレージに保存してファイルを共有する必要がありません。
SaaSとPaaS、IaaS、その他との違い
SaaSと似ている言葉に「PaaS(パース)」「IaaS(イアース/アイアース)」があります。
「PaaS」や「IaaS」も、SaaSと同様クラウドサービスの一種ですが、サービスの提供範囲に違いがあります。SaaSはソフトウエアを提供するサービスなのに対し、PaaSはプラットフォーム、IaaSはサーバやネットワークなどのインフラを提供するサービスです。
「PaaS」や「IaaS」以外にも「〇aaS」という言葉は多く存在するため、以下で解説します。
用語集
PaaS
PaaSは「Platform as a Service」の略であり「パース」と読みます。
インターネットで特定のソフトウエアを使うための基盤や、環境(プラットフォーム)を提供するサービスのことで、主に、アプリケーションの開発などに利用されます。
代表的なPaaSには「Amazon Web Services(AWS)」や「Google Cloud Platform(GCP)」などがあります。
PaaSは、サービス提供事業者から開発言語や管理システムが提供される仕組みです。よって、自社でゼロから開発環境を構築する必要がなく、手軽にソフトウエアを開発・運用できる点は大きなメリットです。
laaS
laaSは「Infrastructure as a Service」の略であり、「イアース」や「アイアース」と読みます。
laaSは、システムの稼働に必要なサーバやストレージなどのインフラ機能を、インターネット経由で提供するサービスです。
laaSの代表例として、「Amazon EC2」や「Google Compute Engine(GCE)」などが挙げられます。
IaaSのメリットは、必要に応じてサーバやストレージ(データの保管場所)を柔軟に増やしたり減らしたりできることです。また、導入時に高額な設備投資をしなくて済むため、コストを抑えられる点も利点です。
〇aaSとの違い
PaaSやlaaS以外にも、「〇aaS」という言葉はいくつか存在します。
BaaS
MaaS
RaaS
XaaS
BaaSは「バース」と読み、いくつかの意味を持っています。なかでも「Backend as a Service」はWebアプリやモバイルアプリのバックエンド機能を、アプリケーションサーバ側が提供するサービスです。
バックエンド機能とは、ユーザーの目に触れない部分で、データの処理や保存・管理といった、システムの内部的な機能です。
ほかにも、ブロックチェーン技術をクラウド上で提供する「Blockchain as a Service」や、データのバックアップとリカバリをクラウド経由で提供する「Backup as a Service」、銀行の機能やサービスを企業が取り入れて自社サービスに利用する仕組みの「Banking as a Service」もBaaSといいます。
MaaSは「Mobility as a Service」の略で「マース」と読みます。さまざまな公共交通機関や移動サービスを組み合わせ、検索や予約、決済までの一連のフローを一括で行うサービスです。
RaaSは「Ransomware as a Service」の略で「ラース」と読みます。ランサムウエアによるサイバー攻撃を考えている組織や個人に対して、ランサムウエアを提供するサービスのことで、サイバー攻撃を助長するものとして問題視されています。
XaaSは「X as a Service」の略称であり「ザース」と読みます。これは、前述したSaaSやPaaS、IaaSなどの総称です。
SaaSの代表例
SaaSにはさまざまなサービスがあります。ここでは、SaaSの代表例を紹介します。
オフィススイート
オフィススイートとは、文書作成や資料作成など、事務作業で利用するようなソフトがまとまったパッケージ製品であり、日常の業務に欠かせないものとして長年にわたり広く使われています。
最近ではサブスク方式で利用できるSaaS型でも提供されており、外出先からでも使えたり、自動アップデートや自動バックアップが可能であったりと、クラウドならではのメリットがあります。
複数人で同一の文書を編集したり、アクセス権を社員にのみ設定して外部からのアクセスをブロックしたりでき、導入すれば業務効率化やセキュリティ強化などにつながる点は大きなメリットです。
代表的なオフィススイートはMicrosoft 365ですが、他にOpenOfficeやGoogle Workspace、LibreOfficeなどもあります。
Web会議システム
Web会議システムは、音声通話やビデオ通話などを利用して、社内や社外の方と手軽にコミュニケーションが取れる手段です。パソコンやスマートフォンなどのデバイスとインターネット環境があれば、どこからでもWeb会議に参加できます。さらには、Web会議では相手と画面共有できるため、資料の印刷が必要ありません。
Web会議に利用できるツールには、ZoomやSkype、Google Meetなどがあります。
ビジネスチャット
ビジネスチャットは、社内・社外にかかわらず手軽にコミュニケーションを取れるサービスです。特定のプロジェクトに関わるメンバーをチャットグループに招待し、対象のメンバーとクローズドなやりとりができます。
メールのようにメールアドレスを入力して送信する手間が省け、やりとりの履歴も一目でわかるよう一覧化されているため、手軽にチーム内で情報を共有する際に有効なサービスです。
ビジネスチャットには、Slack、Chatwork、Microsoft Teamsなどがあります。Microsoft Teamsは、Web会議システムとしても利用されています。
グループウエア
グループウエアは、プロジェクトを遂行する際に、組織内で円滑にコミュニケーションをとるためのシステムです。
1つのSaaSでメールの送受信やプロジェクトのスケジュール管理、ファイル共有などのさまざまな機能を利用でき、1つのシステムでプロジェクト推進のために必要な機能がおおよそ網羅できます。
Google WorkspaceやMicrosoft 365などがグループウエアの代表例です。
オンラインストレージ
オンラインストレージは、インターネット上で資料や画像などのデータを保存できるサービスです。
データを物理的なストレージではなく、クラウド上に保存することで、インターネット環境さえあればどこからでもデータにアクセスできます。同じプロジェクトを遂行しているメンバー同士でデータを共有する際などに便利なサービスです。
オンラインストレージの具体例としては、OneDriveやDropbox、Google Driveなどがあります。
◎「ファイル共有」の詳しい解説はこちら
スケジュール管理
SaaSのスケジュール管理システムは、チームの予定をメンバー同士で簡単に共有できるサービスです。
スケジュール管理システムに登録したスケジュールは、閲覧の権限が付与されたメンバーであれば誰でも確認できます。さらに、スケジュールの公開範囲を限定できるため、機密性が求められる業種でも安心して利用可能です。
例えば、Google カレンダーやTimeTree、TeamOnなどがスケジュール管理システムに該当します。
電子契約システム
SaaSの電子契約システムとは、契約書の作成から締結、保管などをクラウド上で行えるシステムのことです。
紙文書ではなく、電子データ化された契約書に電子署名とタイムスタンプを付与し、契約をスムーズに締結できます。タイムスタンプは、「電子データ化された契約書が存在しており、改ざんされていないこと」を証明するためのものです。
大企業や中小企業だけでなく、個人事業主が契約の際に活用することもあります。
代表的な電子契約システムには、クラウドサインやGMOサインなどがあります。
会計ソフト
会計ソフトとは、経理や財務などに必要な作業を自動化したり、一括で管理したりして業務を効率化できるソフトです。SaaSの場合、インターネット環境があれば会計ソフトを利用できるため、社内はもちろんテレワークの際も活用できます。
会計に関する法律は適宜改正が行われるため、担当者は、継続的な専門知識のアップデートが不可欠です。SaaSの会計ソフトは、法改正に応じて自動でアップデートされることが多く、税法や会計基準の変更による間違いが起こりにくいという特徴もあります。また、顧問契約を結んでいる税理士や会計士とアカウントを連携し、内容を共有できる点も大きな魅力です。
よく知られた会計ソフトには、マネーフォワード クラウド会計や、freee会計、弥生会計オンラインなどがあります。
ワークフローシステム
ワークフローシステムとは、決裁者に承認を得るための作業を電子化し、申請・承認・決裁の一連のフローをクラウド上で完結するためのシステムです。
初期費用無料のサービスが多く、導入コストを抑えられる点や、インターネット環境があればすぐに利用開始できる手軽さが魅力です。さらには、自動でアップデートが行われるため、管理にかかる手間やコストが抑えられます。
クラウド型のワークフローシステムを利用すれば、サービス提供会社のサーバにデータが保管され、災害によってデータが失われるリスク回避できます。
X-point Cloudやジョブカンワークフローなどが、ワークフローシステムの代表例です。
SaaSのメリット
SaaSの主なメリットは、次の4つです。
ソフトウエアの開発や導入が不要
導入コストが安価
常に最新機能を利用できる
保守管理の負担が少ない
ここからは、それぞれのメリットについて解説します。
ソフトウエアの開発や導入が不要
SaaSは、サービス提供事業者から提供されるソフトウエアを利用するサービスのため、ユーザー自身がソフトウエアを開発したり、インストールしたりする必要がありません。そのため、インフラの管理や、ハードウエアの維持にかかる手間を削減できます。
また、ソフトウエアの運用やメンテナンスも事業者が行うため、従業員は日常業務に専念できます。
導入コストが安価
SaaSはサブスクリプション型が多く、毎月一定の料金を支払うことでソフトウエアをいつでも利用できます。
SaaSを利用せずに自社でシステムの開発から構築まで行ったり、高額なパッケージを購入したりする場合と比較すると、大幅に導入コストを削減できるでしょう。
常に最新機能を利用できる
SaaSはサービス提供事業者がサービスをアップデートするため、常に最新機能を利用できます。専門知識をもとにしたアップデートが期待でき、自社で開発や構築を行うよりも質の高い機能を利用できるでしょう。
アップデートの管理や技術的なサポートを提供事業者に任せられるため、自社のリソースを本来の業務に集中させることが可能です。
保守管理の負担が少ない
SaaSは、システムを自社で構築するものではありません。そのため、保守管理についても、自社での対応はほとんど不要です。
自社開発したシステムやインストール型のソフトウエアを利用する場合は、バックアップや障害対応などを自社で行う必要がありますが、SaaSの場合はそれらの対応をサービス提供事業者が行います。
用語集
SaaS導入時のポイント
SaaSを導入する際のポイントは以下のとおりです。
導入目的を明確にする
必要な機能を洗い出す
セキュリティ体制を確認する
コストパフォーマンスを検討する
安心して利用できる体制を整える
この章では、それぞれのポイントについて、解説します。
導入目的を明確にする
SaaS導入の目的が明確でなければ、「どのような機能を持つサービスを選ぶべきか」の判断を誤り、業務を効率化できない恐れがあります。
「作業時間の短縮」や「法令対応」、「テレワークの推進」など目的を具体化し、SaaS導入後のビジョンを明確にした上で社内全体への周知を行えば、期待した結果に結びつくでしょう。
必要な機能を洗い出す
自社に最適なSaaSを選択するには、必要な機能の洗い出しが有効です。
自社の目的や課題、業務プロセスの整理などを行うとともに、無駄な手作業やヒューマンエラーの多い工程を特定することで、自社に必要な機能が見えてきます。
また、ブレインストーミングやワークショップなどで多くの社員と交流し、現場で必要とされている機能やシステムをヒアリングすることも有効です。
セキュリティ体制を確認する
SaaS型ソフトウエアはサービス提供事業者がセキュリティ管理を実行しているため、「セキュリティをより強固にしたい」と考えても、利用者側では実現できません。セキュリティ対策が不十分なSaaSを利用すると、情報漏えいなどによって、自社だけでなく取引先や顧客にまで影響が出る可能性があります。
SaaS型ソフトウエアを利用する際は、提供事業者が実施しているセキュリティ対策について、よく確認することが大切です。SaaS提供事業者のホームページを確認したり、利用者の声や、過去にセキュリティ関連の事故がなかったかどうかを調べたりしてみましょう。
また、SaaSを利用する際には、ユーザー側の過失による情報漏えいのリスクにも注意が必要です。ケースとしては、アクセス権限の設定を間違えて第三者がアクセスできる状態になっている、ID・パスワードの管理を怠ってID情報が漏えいしてしまい不正に閲覧される、などが懸念されるでしょう。
サービスを利用する従業員全員がセキュリティに関する共通意識を持てるよう、利用マニュアルの制定がおすすめです。
コストパフォーマンスを検討する
SaaSはサービスによってさまざまなプランや価格が設定されており、自社の予算をふまえ、価格を比較する必要があります。
無料トライアルを設けているサービスもあるため、上手に活用してコストパフォーマンスの良し悪しを判断してみましょう。
また、自社の予算と、必要な機能にマッチしたSaaSを確実に選びたい場合は、導入コンサルタントやITコンサルタントに相談するのもおすすめです。
安定して利用できる体制を整える
SaaSを快適に利用するには、サービス提供事業者の充実したサポート体制と、安定した通信環境の整備が鍵です。SaaSの不具合でサービスが利用できなくなったり、使い方がわからなかったりすると、業務に支障をきたす恐れがあります。
業務を円滑に進めるためには、迅速なサポートを受けられるSaaSを選ぶのがおすすめです。24時間対応のチャットサポートが設置されている、電話による問い合わせ窓口が用意されているなど、サポート体制について確認してみてください。
また、業務をスムーズに遂行するためには、安定した通信環境も重要です。例えば、Web会議を行うためには、約10~30Mbpsの通信速度(目安)が必要です。通信ネットワークに不安がある場合は、以下の記事を参考に通信速度の改善を目指してみてください。
◎「通信速度が遅くなる原因と対処法」の詳しい解説はこちら
なお、ネットワーク障害によってインターネットに接続できなくなるとSaaSも利用できなくなるため、事前にネットワーク障害への対策を講じておく必要もあります。ネットワーク障害への備えとして、予備回線の契約がおすすめです。例えば、今お使いの回線とは別に関西の法人さま向け光回線「オフィスeo光」を予備の回線として運用いただければ、今お使いの回線に障害が起こって通信できなくなっても、オフィスeo光が利用できます。
「オフィスeo光」を活用した
リスク軽減方法についてはこちら
まとめ
SaaSとは、サービス提供事業者から提供されるソフトウエアをインターネット上で利用するサービスのことです。
SaaSを導入する際は、導入目的を明確にしてから必要な機能を洗い出し、コストパフォーマンスなどを考慮して選びましょう。
関西の法人さま向けに光ファイバーネットワークを提供するオプテージでは、さまざまなビジネスアプリケーションを備えたSaaS「Microsoft 365」の導入サポートを行っています。
Microsoft 365を導入すると、WordやExcelなどのOfficeアプリケーションや、高度なセキュリティのWindows OSなどが利用でき、企業の生産性やセキュリティの向上が実現できます。
オプテージの導入サポートでは、Microsoft 365のライセンス提供のほか、利用に必要な各種構築作業、導入・移行作業、操作方法に関する問い合わせ対応など、安心のサポート体制を整えています。Microsoft 365やオプテージの導入サポートの詳細は、以下よりご確認ください。
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