【BCP対策】冗長化とは?意味や種類、具体的な実施方法を解説
- 公開日:2024年11月20日
冗長化は、サイバー攻撃や自然災害などの非常事態が起きた際に、平常通りの業務を継続するため、あらかじめ予備の設備を準備し、運用することを指します。ITの活用が不可欠となった現代社会において、社内のシステムに対するリスク対策は不可欠です。
本記事では、冗長化のメリットやデメリット、冗長化の構成の種類、また冗長化を検討すべきシステムについて解説します。貴社のリスク管理にぜひご活用ください。
- 冗長化とは?
- 冗長化と「ミラーリング」「バックアップ」の違い
- 冗長化のメリット
- 障害発生時の損失を最小限にできる
- BCP対策を強化できる
- サーバ負荷を分散できる
- 冗長化のデメリット
- 導入・運用にコストがかかる
- 運用保守の労力が増える
- 冗長化の構成は4種類
- アクティブ・スタンバイ
- アクティブ・アクティブ
- マスター・スレーブ
- マルチマスター
- 冗長化を検討すべきシステム3選
- サーバ
- ストレージ
- ネットワーク
- まとめ
冗長化とは?
ITにおける冗長化(じょうちょうか)とは、コンピューターやサーバなどの機器、ネットワークやシステムなどに何らかの障害が発生した際に備え、平時から予備の設備を準備し、運用することをいいます。
例えば、自社で使用しているサーバが災害やアクセス集中などにより正常に機能しなくなった場合、ホームページにアクセスできなくなったり、メールの送受信ができなくなったりと、サーバを利用した業務が停止してしまうことがあるでしょう。しかし、サーバを冗長化していれば1つのサーバがダウンしても、予備のサーバへ切り替えられます。つまり、業務を続行しながら、不具合の起こったサーバの復旧作業が可能となるのです。
冗長化はネットワーク回線やデータなども対象となります。
◎「サーバ」の詳しい解説は
こちら
冗長化と「ミラーリング」「バックアップ」の違い
「ミラーリング」はデータの冗長化の一種です。一方「ミラーリング」と似た方法に「バックアップ」がありますが、バックアップは冗長化とは異なるものです。
ミラーリングは、元のデータを更新した際、他の場所に保存したデータも、まるで鏡に映したように上書きされていく仕組みです。普段使用している機器に何らかの障害が起こっても、別の機器によって最新のデータを取り扱うことができます。
一方のバックアップは、一日ごと・一週間ごとなど、期間を定めてコピーを作成し、保管する仕組みです。データは最新のものだけでなく、複数のバージョンが複製されるかたちとなります。
この2つの最も大きな違いは、データを過去の状態に戻せるかどうかです。
バックアップの場合、もし、元のデータを数日前の状態や更新前の状態に戻したい際に、その時点のバックアップをとっていれば任意のタイミングに復元することができます。一方、ミラーリングはデータを更新するとほぼ同時に上書きされていくため、過去の状態に戻す目的で使用されるものではなく、有事の際に最新のデータを別の設備で扱えるようにしておくために使用されます。
冗長化のメリット
冗長化のメリットとして最も分かりやすいのは、システムやデータなどに不具合が生じた際に迅速に復旧し、業務を継続できることです。
ここでは、冗長化のメリットについて詳しく紹介します。
障害発生時の損失を最小限にできる
冗長化することで、システムに何らかの不具合が発生した際、予備のシステムに切り替えることができるようになり、問題のあるシステムの復旧作業を行いながら業務を継続できます。これにより、業務への影響を最小限に抑えることができるでしょう。
例えば、ネットワーク回線の冗長化を行うことで、メイン回線に障害が発生した場合でも、予備の回線を使って接続を維持することが可能です。また、ストレージの冗長化では、メモリーディスクに障害が発生しても他のディスクが使用できるため、データ損失や業務停止を防ぐことにつながります。
用語集
BCP対策を強化できる
BCP(事業継続計画)とは、自然災害やサイバー攻撃などの緊急事態が発生してもビジネスを継続できるように計画を立てることです。
冗長化によるBCP対策の例として、災害によってサーバがダウンした場合に備え、離れた地域に予備のサーバを用意しておけば、自然災害が発生してもシステムを稼働できる可能性が高まるといったケースがあります。他には、システムがサイバー攻撃によってウイルス感染した場合を想定し、予備のシステムを備えておくことも挙げられます。
◎「IT-BCP」の詳しい解説は
こちら
サーバ負荷を分散できる
サーバにアクセスが集中すると処理能力に大きな負荷がかかり、応答速度の低下や接続エラー、サーバダウン(機能停止)を引き起こすことがあります。
アクセスが集中するケースとしては、キャンペーンやセールの開催、新製品やサービスの発表直後、災害時・緊急時の問い合わせなどです。そのほか、SNSの投稿に極めて注目が集まった際は、投稿者のホームページにアクセスが集中することもあるでしょう。
サーバの冗長化によって複数のサーバを稼働させ、負荷を分散させることで、業務に支障が出る事態を防ぐことができます。
冗長化のデメリット
緊急時の対策として必ず実施しておきたい冗長化ですが、デメリットと捉えられる点もあります。
導入・運用にコストがかかる
メインとは別に予備の設備を用意するため、その分コストがかかります。
冗長化実施の際のコストには、サーバやネットワークなどの予備設備の導入費、平時における予備設備の稼働費、さらには運用する人員の人件費も含まれます。サーバの保守や運用を外注する場合は、その外注費も考慮しなければなりません。
そのため、事前に冗長化による費用対効果を測りつつ、冗長化する対象を選定する必要があります。
運用保守の労力が増える
予備のシステムや設備・データなどは、いつでも稼働できる状態にしておく必要があるため、運用保守に労力を要します。
さらに、メインの機器同様、OSのバージョンやセキュリティソフトなどのアップデートのほか、ハードウェアの交換や障害時の対応は、予備システム側でも実施していかなくてはなりません。
無理のない冗長化のためには、あらかじめ運用保守の体制や手順を整備しておく必要があります。
用語集
冗長化の構成は4種類
冗長化は、メインとなるシステムや設備と予備システムの稼働のさせ方によって、4つの構成に分けられます。
アクティブ・スタンバイ
アクティブ・アクティブ
マスター・スレーブ
マルチマスター
それぞれの構成について、詳しくみていきましょう。ここでは、「サーバの冗長化」を例に解説します。
アクティブ・スタンバイ
アクティブ・スタンバイとは、1つのサーバをメインとして常時稼働させ、他の予備サーバは待機させておく構成です。障害が発生した際には、予備サーバが処理を引き継ぐことになります。
なお、アクティブ・スタンバイでの予備サーバの待機の方法には、「ホットスタンバイ」と「コールドスタンバイ」があります。
ホットスタンバイは、平時から予備サーバの電源を入れておき、稼動しているメインサーバと常にデータの同期を行っておく(ミラーリング)方法です。ホットスタンバイなら、メインサーバが突然ダウンしても、即座に予備サーバに切り替えることができます。
一方、コールドスタンバイは、平時には予備サーバの電源を切った状態で待機します。メインサーバに障害が発生した際に起動させ、処理を引き継ぎます。ホットスタンバイに比べて切り替えに時間がかかりますが、予備サーバの運用コスト(電気代など)は抑えられるというメリットがあります。
政府系や金融機関に代表されるように、「どのような状況でも絶対に止められないシステム」ならばホットスタンバイを。数時間のシステム停止であれば業務やサービスに大きな影響がない場合はコールドスタンバイがおすすめです。
アクティブ・アクティブ
アクティブ・アクティブは、複数準備したサーバを、常時全て稼働させて運用することです。
複数台を同時に稼働させることでアクセス集中によるサーバへの負荷を分散する目的があります。加えて、万一いずれかのサーバにトラブルが発生した場合でも、問題のないサーバでの運用に切り替えて使用します。
マスター・スレーブ
マスター・スレーブは、複数のサーバの連携によって構成されているシステムにおいて、制御・操作を司る「マスター」機と、マスター機の制御によって動作する「スレーブ」機に役割を分担することで、サーバ負荷を軽減させます。
平時はマスターがデータの書き込みや読み込みといった処理を行い、スレーブはマスターの制御によって、マスターのデータの複製(バックアップ)を実行するといった方式です。
平時のスレーブはあくまでもバックアップであるため、データの書き込みはできません。マスターに障害が発生した際は、スレーブの中の1つをマスターに昇格させることで、マスターと同様の処理ができるようになります。
なお、「スレーブ(奴隷)」というワードを避けるため、近年では「プライマリー・セカンダリー」や「プライマリー・レプリカ」「メイン・セカンダリー」などといった言葉に置き換えるよう推進する動きがあります。
マルチマスター
ほかの構成と違い、全てのサーバにマスターの役割を持たせる方式です。どのサーバでも書き込み・読み込みが行えるため、有事の際にもメインから予備に切り替えるタイムラグがなくなります。
なお、マルチマスターの注意点は、全てのサーバが同等の立場となるため、データの同期に不具合が起こった場合、どのデータが正しいのか判断できなくなる可能性があるところです。そのため、非常時にデータの整合性を保つための対策が必要です。
例えば、「一番新しいデータを正とする」「特定のサーバのデータを優先する」といったルールを設定しておくことで、データの一貫性を保てるでしょう。
冗長化を検討すべきシステム3選
システムの冗長化は緊急時における事業継続にとって重要な要素ですが、ここでは、特に冗長化を完了しておきたい3つのシステムを紹介します。
これらのシステムにおける冗長化の有効性と重要性を、ぜひご確認ください。
サーバ
サーバを複数台用意することは、冗長化の代表的なケースです。社員が利用する社内サーバ、公開するWebサーバともに、問題なく業務を遂行する上では「止められないシステム」といえます。特に、サーバはサイバー攻撃のターゲットになりやすい点からも、優先的に冗長化すべきといえるでしょう。
なお、サーバを冗長化する際は、物理サーバを準備するほか、クラウドサーバを活用する手もあります。クラウドサーバとは、クラウドサービスを提供する事業者と契約することによって、自社でサーバを保有せずにインターネット上にあるサーバを利用できる仕組みです。クラウドサーバを利用すれば、保守管理の労力やコストを大きく抑えることができます。
クラウドサーバの例として、Amazon EC2(AWS)、Azure Virtual Machines(Microsoft Azure)、などがあります。
用語集
ストレージ
大量のデータを保存したストレージに不具合が生じると、業務に大きな影響を与えることになります。特に、販売管理や在庫管理、生産管理、財務会計といった経営を支える業務を一元して担う「基幹システム」や、顧客情報にも関連する「決済システム」のストレージに何らかの不具合が生じた場合、企業全体に影響が及ぶこととなるでしょう。
ストレージの冗長化においても、クラウドサービスの一つである「オンラインストレージ」が有効といえます。物理的なストレージを複数保有することは、サーバ同様、保守管理のリソースやコストに影響するためです。
オンラインストレージの代表的なものには、Google Drive、OneDrive、Box、Dropboxといったものがあります。
用語集
ネットワーク
ネットワークはサーバやパソコンなどのデバイスを接続し、データをやり取りするための経路です。IT化が進む現代、社内・社外を問わず、さまざまな業務の遂行やサービス提供の上で、安定したネットワークは欠かせません。もし、ネットワークに問題が発生し、メールやWeb会議、自社の拠点間通信などが使用できなくなったり、インターネット経由で利用するクラウドサービスが使えなくなったりすると、業務に重要な影響を及ぼしてしまうでしょう。
そこで、ネットワークの一部で問題が発生しても通信を利用できるよう、ネットワーク回線も冗長化しておくのが最善です。アクセス回線を二重化しておくことで、一方に通信障害が起こっても、もう一方の回線に切り替えての通信が可能となります。
現代のビジネスにおいて欠かせない存在となっているネットワークには、常に安定した環境が求められるため、ネットワークの冗長化は積極的に検討すべきといえます。
用語集
まとめ
ITが普及しあらゆる業務が効率化した反面、自然災害やサイバー攻撃などへの備えは必須事項となっています。そして、そうした備えをより確実に有効化するためには、現代のビジネス環境で必須となっている通信回線の安定性が欠かせません。
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万一、通信障害が起きた際、異なる回線・設備でネットワークを冗長化していれば、障害の影響を受けていない予備回線に切り替えることで、引き続きインターネットを利用することができます。「オフィスeo光」を提供するオプテージは独自の光ファイバーネットワークを所有しており、NTT網とは全く別の回線設備構成が可能となります。また、関西電力の高い運用レベルを受け継ぎ、一元的に保守・運用しているため、安心してご利用いただけます。
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